食をとおして暮らしを考える

【名前】菅野久美子(30代)
【同居している家族】子ども(10)
【3.11後の避難の経緯】福島県伊達市(震災時)→東京都(2011.3)→神奈川県(2011.4)→東京都(2011.6)→岡山県玉野市(2013.3)→同市で転居(2015.3)

§ 心身ともに傷つかないほうがいい

3.11の後、子どもが福島にいることによって、心身ともに傷つかないほうがいい、と思い福島を離れた。けれど東京で、震災前と変わらない、消費をつづける暮らしを送っていることに抵抗を感じて、「もっと暮らしを大事にしたい」と岡山へ移った。

§ 人生の楽しみ方

震災後の5年で、本当に自分が変わった。 福島や東京にいる時とはまったく違い、暮らしが楽になる知恵がついて、生活もシンプルになってきた。 やりたいことを行動に移せるようになった自分にも驚いている。
いま私のまわりには、生きることや暮らすことに対して真面目な人がたくさんいる。 自分で考えて決断し、人生に対しての責任を負うことを、のびのびあたり前にやっている、本当の意味での自由な人たち。 人生の楽しみ方を共有できる人たちと、ワイワイ話して過ごせることに豊かさを感じているし、この中で子どもたちを育てて行きたい。そして、今を幸せと思うくらいに悲しいこともいっぱいあったし、傷ついたこともいっぱいあった。だから余計に、いまが嬉しいのだと思う。

§ ここに根を張る覚悟ができた

昨年「福島から岡山へ~原発事故から5年目のいま」の冊子の取材を受けたけれど、この1年で、ここに根を張る覚悟ができてきたようだ。
これからの仕事を考えたとき、自分が関わったものが何かを傷つけることに使われるよりも、みんなで一緒に楽しく幸せになることをしたい。 お腹を満たして無添加の安心できるおやつをみんなで食べたい、と思った。 そこで、ここで出会った友人と、蒸しパンのお店「3時のおやつ」を始めることにした。

§ 面白い出会いや成長が密かにある町

お店のある玉野、とくに宇野駅周辺は暮らしやすい。 田舎だけど閉じていない、港町で色々な人が出入りする、来るもの拒まず、出るもの追わずの町だから、わたしたちがやることに大きな関心もないけれど、否定もしなくて、そこが良い。 小さい町なのに、何かを始める人や、フラッと滞在する人もいて、面白い出会いや成長が密かにある。いいタイミングでいいところに越して来られたと思っている。
§ 距離が離れていることで許しあえる

わたしが変わったから、震災前と変わらないことを選んだ家族とは、どんどん価値観が離れてきた。 一緒に暮らすと大変だろう、距離が離れているくらいがちょうど許しあえるのかなと思う。 けれど、妹が食材を何気なくチェックしてくれたりするようになってきた。 開いた溝は無理に埋めようとしなくても、あきらめないでいたい。

(2016.11.29 飯塚・仙田)
  

「3時のおやつ」 玉野市築港1丁目18-3
「小腹がすいた」ときにちょうど良い手作りおやつの店。岡山県産小麦、九州産大豆の豆乳、米飴などを使い、卵・乳製品不使用の身体に優しい蒸しパンの製造販売と、暮らしを考える講座・ワークショップ(不定期)を行う。
*3時のおやつFacebook http://www.facebook.com/3jino.oyatsu.tamano